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連載 幕末・維新の桑名藩シリーズ 郷土史家 西羽晃(著)

幕末・維新の桑名藩シリーズ09
幕末桑名藩の財政難(2)

桑名藩の飛地である越後柏崎は、桑名の国元と違って、年貢米は柏崎で払下げられた。藩から特別に許された商人に入札によって売却された。藩は彼らに入札に参加する権利を与えるとともに、彼らに金銭の提供を求めた。そして彼らは御内用達となり、名字帯刀を許され、藩と強く結びつく特権商人となっていった。(『柏崎編年史』)。
前回に述べたように桑名藩の財政は天保14(1843)年に一時的に持ち直したが、天保15年5月10日に江戸城本丸が焼失し、その復旧費用の割当てがあった為であろうか、同年11月7日、柏崎では、御内用達を呼び出している。その内容は不詳だが、「調達金御頼にも有之事かと被存候」(『柏崎日記』)。調達金とは藩が借用して、利息をつけて返済する金銭である。

天保15年11月には、柏崎の御内用達・本間徳右衛門に対して、「先年相納置候調達之内今般百両献、借残金之分無利息ニ而御返済」(『柏崎町会所御用留』、以下『柏会』と略す)とあり、調達金の一部は献上させ、残金は無利息にしている。調達金の他に御用金・冥加金・献上金もあった。これは調達金とは違い返済さない金銭である。それらを含めて柏崎の商人から金銭を納めさせている。それらを以下に列記する。

弘化2(1845)年には江戸桜田門の火消役を桑名藩は命じられ、その費用負担のため、柏崎へ1年に2,000両づつ3年間で6000両を出して、その後の4年間で返済する調達金を課している(弘化2年7月19日付『柏会』)。

弘化3年1月15日に桑名藩江戸屋敷が類焼した。その復旧費用が嵩んだため、天保12年に借りた調達金3,000両(無利息)の返済が困難となり、違約ではあるが、3年間の返済猶予を求めた。ただし猶予分の利息は支払うことにした(弘化3年10月付『柏会』)。この時には冥加金も求めている様で、それを何年間の分割で納めているようである(嘉永元年10月29日付『柏会』)。中には冥加金を割り当てられても拠出しない者もいた(嘉永元年5月26日付『柏会』)。

嘉永元(1848)年、藩主松平定猷が就任後初めて帰国するについて、その費用のため、柏崎の商人たちに1,500両の調達金を課している(嘉永元年5月8日付『柏会』)。

嘉永6年には6,000両の御用金を柏崎の商人や農民に課している。3年間の分割である((嘉永6年8月2日付『柏会』)。

翌年の嘉永7年4月、異国船の警備費用のため、冥加金が求められたが、昨年からの御用金を納めている途中であり、二重の負担となるので、紛糾したが、結局は800両で決着した(嘉永7年4月20日付、5月1日付『柏会』)。

京都所司代となったために、出費はますます増えて、御用金も次第に高額となった。文久3(1863)年御用金8,000両を3年間で納めさせた。

上記の御用金は3年経った慶応元(1865)年に終った。しかし京都での経費は多いので、再び御用金を課したいところであるが、近年は物価も高騰しており、御用金を命じにくい。ところが慶応2年は桑名分で13,000石余、柏崎分で2,800石余の減収という大凶作となった。このため調達金15,000両を命じた(慶応2年11月18日付『柏会』)。

慶応3年いよいよ幕府倒壊が目前となってきた。桑名藩も京都への動員などで、出費は鰻のぼりである。同年10月24日、御用金12,000両を3年間に納めるように命じた。以前は御用金を命じるときには、ご馳走を振る舞っていたが、このころには申渡すだけである。3年間の予定だったが、とても余裕がなく、11月18日には一度に納めるように命じている。この御用金が実際に納められたか、どうか定かでない。


国元の桑名での調達金などの状況は不明だが、四日市川原町の山中伝四郎が桑名藩に出した調達金のうち、明治4年末現在の未回収残金の届け書が残されている。それによれば、
安政3(1856)年9月 1500両 貸付残金 450両 抵当 羽津・茂福村
元治元(1864)年3月 1000両 貸付残金 200両 抵当 高松村
元治2(1865)年12月 1000両 貸付残金 400両 抵当 江場村
慶応元(1865)年12月 1000両 貸付残金 600両 抵当 冨田一色
慶応3(1867)年正月  1000両 貸付残金 800両 抵当 高松村
合計すると貸付残金は2450両となる。利息は年1割であり、明治元年から利息も支払われていないので、その間の利息分が金874両ほどになっている。

なお山中家では忍藩への貸付残金は4734両もあり、他にも神戸藩・加納藩へも貸付けている。
(2011.07.04)

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